曲の価値よりもライブパフォーマンスの価値を上げていきたい

レコード・CDの売上が年々減少していっていることはよく知られているが、それに代わりライブでの収益は増加しているらしい(イギリスでの調査)。

これらのグラフが主張していることは明らかだ――「レコードの売り上げは確かに年々減少している。しかし他方で,人々はライブにお金を注ぎ込むようになった。音楽産業全体で見ればむしろ収益は増加しており,その収益はレコード会社よりもアーティストやライブプロモーターへともたらされるようになりつつある。」

レコードからライブへと変化する音楽産業 - Radium Software

有料音楽配信を含めた楽曲販売による売上は、これからも減少していくだろう。なぜなら、自分が好で聴きたい音楽を無料で聴くことがどんどんできるようになってきているからだ。数年前までひと月に10枚近いCDを購入していた自分も、主にPodcast、次にネット見つけたものを無料ダウンロードして聴いている。自分の好きなジャンルがポップスではなくクラブミュージックということもあって、CDを買わずともかなり満足できている。

こういった中、楽曲販売に代わりライブの収益が増えてという調査結果は自分にとって嬉しい。音楽業界全体が衰退していっているわけではないからだ。これから「音楽」を売っていくならば、自作楽曲を売ろうとするよりも、ライブパフォーマスの価値を上げていく、その認知度・集客力を上げる方に注力した方が良いと考えられる。

自分が興味を持っている、今後活動して行きたいと思っている範囲はクラブミュージック・DJであり、音楽業界の中でも本当に狭い範囲で今回引用した調査結果とどのぐらい似た傾向なのかは分からない。でも、このジャンルは今も昔もこれからも「限定された空間でのライブ」が基本だ。これが好きな自分は自信を持って、自分の好きな音楽に取り組んでいきたい。

(2010年初夏頃から本格的に音楽活動を開始させる予定)

フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略

フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略

3年前に少し考えたことがあった

2006年7月に都内で開催された「第4回デジタル音楽勉強会」に参加した際、2つ質問に回答文章を書いたことがある。以下の内容を書いたのは2006年7月10日のこと。太字にした部分はこれからより一層、特徴として目立っていくかもしれない。

muziemF247などインディーズミュージシャンが無料で楽曲を配信するサイトが注目されつつありますが、こうした「無料音楽配信」が持つ可能性について感じていることをお書き下さい。

iPodなど携帯オーディオプレイヤーが普及してきたとはいえ、PCで曲を取り込む、またはダウンロードして自宅・屋外で聞くリスナーは、全体から見るとまだ多数派ではないと思います。レンタルCDからMDへ録音し、MDウォークマンで聞いている人の方が多いかもしれません。

まず、無料音楽配信が普及することにより、「MDウォークマンからiPod」へのリスナーの移行が促され、MP3やAACという音楽ファイルがどんどん身近になっていくと思います。

CDでなく音楽ファイルで音楽を聞く人が増え、無料音楽配信をダウンロードし、良い音楽でも「音楽ファイルなら」タダで手に入れることができる、という意識を人々が持つようになれば、これまでの日本の音楽ビジネスの常識・著作権などの法律が通用しなくなる部分が浮き彫りになってくるでしょう。(勉強不足で具体的に申し上げられませんが)

また、著作権は守られるべきだと思いますが、著作者はもっと柔軟なライセンス形態を提供するべきです。

CD販売やレコードを複製するにはテープにするしかなかったときからの、これまでのやり方や常識は通用しなくなってくるでしょう。プロテクトをCDやファイルにかけたとしても、解除されコピーされ配布されます。音楽はあるときは無料であり、無料でなくてもコピーされるものだ、という前提で動くべきなのかもしれません。

無料音楽配信が「ネットという世界」で流行るにつれ、これらを考え直すきっかけにもなるだろうと考えています。それはおそらく、これからのリスナー、また、これからの時代において音楽ビジネスを始めようとする者にとってプラスに働くはずです。

無料の音楽配信サービスのプロモーション効果がミュージシャンから注目される一方で、サービスそのものの「ビジネスモデル」はまだ不透明な状況が続いています。こうした無料の音楽配信サービスが単体で成立するかどうかも含めて、こうしたサービスが成立し得るビジネスモデルの可能性をお書き下さい。

無料の音楽配信はあくまで無料であり、音楽配信自体が収入源とはなりません。無料音楽配信を売りにそのサイトの集客率を上げ、広告による収入などを主とするビジネスモデルがまず思いつきますが、例えそれで高収入を得られたとしても、広告収入をメインとするべきではないと思います。便利なサービスを無償提供でき、ユーザーは喜ぶかもしれませんが、音楽ビジネスとして新しいことは何もありません。

無料音楽配信はプロモーションとして利用し、それにより認知度を上げ、CDの販売・ライブ等での集客を上げていくために利用するべきかと思います。

インターネットをメインで利用するプロモーションは、既存メディアを利用するより低コストで、国を問わずアプローチすることができます。

J-POPSと呼ばれるジャンルでは、JASRACなど権利団体とのしがらみもあってか楽曲を完全に無料で公開するのは難しく、また、できたとしても、おそらくCDの売上は下がるでしょう。せっかくのインターネットを利用するのに、海外に向けてアプローチしても大きな効果があるとは考えにくい面もあります。

ですが、クラブミュージックやインストゥルメンタルの曲を広めようと思っている者にとっては、世界中のリスナーの耳の届かせることができるだけで、CDの売上向上に繋がる可能性が考えられます。

音楽はコピーできます。人に配ることができます。しかし、好きなアーティストのプロダクトとしてのCDは複製できません。ライブに行って体験したことを人にそのまま渡すことはできません。デジタルではアナログレコードを再現できません。

無料(または有料の)音楽配信は多いに流行って欲しいと思います。音楽の「曲」の価値は維持、または向上させ、価格は下がるように。そうすると、プロダクトとしてのCDやライブチケットの、価格は上がらずに、価値は上がっていくのではないでしょうか。

ここに、新しいビジネスチャンスを感じています。無料音楽配信を単体でのビジネスとして捉えずに、上記のことにつなげるための、あくまで販促のためのプロモーションのひとつとして用意する方が適切ではないかと私は考えています。