村上 龍『限りなく透明に近いブルー』

限りなく透明に近いブルー (講談社文庫)

限りなく透明に近いブルー (講談社文庫)

高校生、17歳のときに1度読んだきりでずっと読み直したいと思って、10年以上が経ち再読した。でもそれは2週間前のことで、残念ながらそのときの衝撃・興奮はほぼ収まってしまった。

坂本龍一が気になっていた高校生時代、本屋で「龍」という文字が目につき村上龍を意識し、名前から興味を持ち始めた。この「限りなく透明に近いブルー」が処女作で群像新人賞芥川賞受賞作品だと知り買って読んでみたとき、何の印象にも残らなかったように思う。実際この10年、この本を読んでこんなことを考えさせられたという記憶はなく、あらすじも曖昧にしか覚えていなかった。でも、最初に興味を持った純文学の作家であったこともあり著作が目につく度に買い揃え、買ってからかなりの時間が経ってから色々読み、今では村上龍、そして彼の作品が大好きになっている。そのことについてはまた改めてエントリを書きたい。

今10年ぶりにこの処女作の再読し、これは凄い、と思った。まず、自分の「好み」にあきれるぐらいマッチした文体。近年の著作とこの処女作と、ほとんど変わっていないものを感じた。また、頭の中に浮かんだこと・考えたことを文章にするとはこういうことか、となんだかすっきりする。自分はこんなにも(潜在的に)村上龍が好きなのかと気付かされた。もっとも、これらは本当に個人的なことでの衝撃だ。

そして、現実的に考えれば派手な出来事ばかり描写されているにも関わらず、最初から最後まで、本当に静かだということ。それは例えば何も音がしなかったために感じるという静けさではなく、「静けさ」というものが存在しそのために感じる静けさに思えた。

…ああ、読み終えた直後に思ったことが思い出せずはがゆい。今になって書けるのはこのぐらいだ。また、読もう。これは、今後何度も読み返せる作品だ。あらすじが面白く、それを楽しむためではない。静けさを感じるためだ。